お墓参りの際や、毎日お仏壇にお供えする「お線香」のことを詳しくご存知でしょうか?
仏具の中でも毎日見かける身近な存在でありながら、どうして仏前に供えるものなのか、その理由については詳しく知らない方も多くいらっしゃいます。
今回は、身近なものだからこそ知っておきたいお線香について詳しくご紹介します。
お線香の歴史について
お線香などのお香は、元々古代インドで発祥したものであり、インドの自然医学アーユルヴェーダにその製法が記されています。
当時は香りそのものを楽しむ目的と、医療用に使われてきました。
日本では仏教が伝来した時期と同じ西暦538年にやってきたと記録されており、その当時は公家など貴族への贈答用品として扱われていました。
それ以来、仏前を浄めるための仏具として、仏事や神事の際に使われてきたのです。
また、当時は着物や部屋に香りをつける目的でも使用されており、日本では栽培できない白檀や伽羅が原料だったことから、香木は非常に高価なものでした。
お馴染みの細長い棒状のお香が、広く世に用いられるようになったのは江戸時代初期。
お線香は香木と一緒に炭を混ぜて練り合わせたものが原料だったため、上流階級のみが扱っていたお香が庶民など様々な階級の人々の間で親しまれるようになっていったのです。
お線香を供えるのはどんな意味があるの?
そんな古くから日本で親しまれてきたお線香。
このお線香を墓前や仏壇へお供えするのは、大まかに以下の理由があります。
・心身を浄化するため
お線香を焚くことで人々の心身を清浄にしてから、仏前に向き合うためにお線香を使用します。
お線香の火は、息で吹き消すのではなく手で扇いで消すのが作法です。
これは、人の口は悪口を言ったり騙したりするなど、穢れにつながると考えられているためなのです。
・亡くなられた方の食べ物
四十九日が過ぎるまでの期間を仏教では「中陰(ちゅういん)」、「中有(ちゅうう)」と言い、極楽浄土までの旅の途中です。
この度の間に、故人の食事となっているのがお線香の香り。
これを「香食(こうじき)」と言い、四十九日が過ぎるまではお線香を絶やすことなく焚き続ける宗派もあります。
・仏様に想いを伝える
仏教ではお線香の香煙を通すことで、仏様へ自分の気持ちを伝えることができるとされています。
生前では話せなかった話題や、最近起きた出来事などを故人へ報告したい時は、お線香を供えて落ち着いた気持ちで話しかけてみてはいかがでしょうか。
<まとめ>
お線香の香りは自然と気持ちを落ち着かせ、慌ただしい日常の中でもゆっくりと時間が流れていく特別な時間です。
仏様とご遺族の想いを繋げてくれる仏具ですので、手を合わせる際はぜひお線香を立てて故人やご先祖様への感謝の気持ちを伝えましょう。