お墓参りに行ったときに、文字が朱色に塗られているお墓を目にしたことがありませんか?
本来であれば着色なしのものや、白、黒などが一般的ですが、目立つ朱色で塗られているのはなぜなのでしょうか?
今回は文字を朱色で塗られたお墓の意味についてご説明します。
朱色の着色の正体は?
彫刻された文字が朱色に塗られているお墓は生前墓、つまり生前の間に建てられたお墓のことです。
もともと、お墓に朱色を入れているのは寺院で「生前戒名」を与えられた者のみでした。
今となっては亡くなられた方が授かるものが戒名というイメージが強いですが、実は仏門に入門したという証明として与えられる名前なのです。
戒名は仏教の戒律を守り過ちを犯さないと誓うためのもので、生前に寺院から戒名をいただいて自分を律していたのです。
そのため、生前のうちに戒名を受けた方がお墓を建てる際は、故人との区別ができるようにお墓の建立者の名前を朱色に塗って「まだ存命である」という印にしていました。
ちなみに、建墓した方が亡くなられたら朱色の着色は消すのが一般的です。
亡くなって引導を渡されたら、お墓から色を抜いて故人がご先祖様の一員になるのです。
生前にお墓を建てる「寿陵」は縁起が悪い?
このように生前のうちにお墓を建てることを「寿陵(じゅりょう)」というお墓で、最近生前墓を希望される方が増えてきています。
生きている間に建墓するのは縁起が悪そうだと考える方もいらっしゃいますが、これは古くからとても縁起の良い行いとして伝えられています。
特に中国では泰の始皇帝から、歴代の中国の皇帝は生前の間に寿陵墓を建ててきました。
寿陵の「寿」は長命や長寿を意味しており、生前のうちにお墓を建てておくことで健康で長生きできると信じられてきたのです。
また、生前のうちにお墓を建てるにはさまざまなメリットがあります。
お墓はとても高価な買い物ですので、これまでは親の死後に子供や親族がお墓を建立するための費用を支払っていました。
最近では終活をする方が増えてきたことで、残される家族に負担がかからないように生前のうちにお墓を自分のお金で建てたい方が寿陵を選んでいます。
ほかにもお墓は相続税がかからないので、建墓のためのお金を遺しておくよりも寿陵墓を建てておいた方が税金の面でもメリットがありますよ。
<まとめ>
お墓の彫刻が朱色に着色されているのは、そのお墓の持ち主が生前に建てた寿陵墓のためです。
生前のうちにお墓を建てるのは私たちにあまり馴染みがないと思いますが、実際は日本でも歴史上の人物があえて寿陵を選択しています。
自分好みのデザインのお墓が建てられるほか、金銭的に家族に負担をかけないで済むなどのたくさんのメリットがありますので、ぜひ終活を考えている方は寿陵墓についても検討してみてはいかがでしょうか。