仏教大国の日本では、特に奈良時代までいろいろな考え方の僧侶が一つひとつのお寺に存在していました。
そんな奈良時代から存在する宗派の一つに、「華厳宗(けごんしゅう)」があります。
この華厳宗は華厳経の教えを学ぶための宗派であり、独自の教学体系を持っている宗教として知られています。
今回は華厳宗とはどんな宗教なのか、またお墓は必要なのかについてご説明します。
華厳宗の開祖について
華厳宗(けごんしゅう)は、杜順(とじゅん)が開祖の宗教です。
日本には審祥によって736年に伝えられ、奈良の大仏として知られている「東大寺盧舎那仏像」を建設しました。
第二祖を智儼(ちごん)、第三祖は法蔵(ほうぞう)、第四祖は澄観、第五祖の宗密へと継承されていき、朝鮮半島にも伝わった宗教でもあります。
第三祖の法蔵の門下であった審祥が、日本で華厳経の講義を行いました。
当時、特に審祥の講義の内容にいたく感激した一人が聖武天皇です。
華厳宗の総本山として、現在の奈良の大仏がある東大寺を造営することに決めたのです。
東大寺自体は観光スポットとして有名ですが、日本には華厳宗自体の広がりはあまり見られませんでした。
そのため、東大寺が華厳宗の総本山というのは知らない方も多いのではないでしょうか?
華厳宗の教えと修行について
華厳宗は「四種法界」という世界観を持っていて、華厳思想の中心となっています。
これはお互いが関係しあい(相即相入)、どこまでも無限に重なり合っている(重々無尽の縁起)という考え方。
私たちが通常見ている世界は「事法界」であり、自我を捨てた空(くう)の理法界を仏の世界と考えています。
華厳宗ではこの2つが共存しているという見方を「理事無礙法界」、そこにただ物事だけが存在する何もない世界を「事々無礙法界」という4つの世界で構成されていると考えられています。
4つの世界を四法界と言い、一般人から見ると通常はそれぞれが別個に存在しているだけです。
しかし、この4つの世界も仏の智恵から見てみれば、そのような個別のものたちが無限に重なり合って構成されていると説いたのです。
とても哲学的で難しい思考ではありますが、つまり自分という個別のものだけでなく、視野を広げて物事の神髄を見極めることが重要だというのが華厳宗の教え。
偏見や自我などの欲を捨てて、物事の神髄をありのままに見つめることが悟りを開くために重要だという哲学的思考の宗教なのです。
華厳宗のお墓について
華厳宗は奈良時代に伝えられた宗教ですので、そもそも葬儀や法要を行わないのです。
そのため、仏壇やお墓は華厳宗のために用意するということはありません。
もし現在華厳宗の信者が亡くなられた場合は、別の宗派、たとえば真言宗などの僧侶が葬儀を行う形となります。
お墓を建てる際や先祖供養を行うときは、葬儀を依頼したほかの宗教のお寺にお願いをして、その宗派のしきたりに沿って行われます。
<まとめ>
華厳宗は宗教でありながら、華厳経を学んで研究するという特殊な性質を持っています。
現在でも数は少ないものの、華厳宗の信者はいらっしゃいます。
しかし、華厳宗は僧侶が亡くなられた方の葬儀や法要を行わないため、戒名や仏壇、お墓などはほかの宗派の僧侶へ依頼するということを覚えておきましょう。