道端やお墓、お寺など、各所で見かけるお地蔵様には、それぞれお役目があって名前も違うことをご存知ですか?
お墓の隣に地蔵が建てられているのを見かけた経験がある人もいるでしょう。
あの小さなお地蔵さまは、さまざまな事情でこの世に生まれることができなかった胎児や生まれて1年以内に亡くなった赤ちゃんを祀った水子地蔵です。
しかし、水子地蔵と言ってもその見た目に違いがあり、それぞれ役割が異なります。
今回は水子地蔵とはどんなものなのか、また見た目が違うのはどんな地蔵なのか詳しくご説明します。
水子地蔵とは?
水子(みずこ)とは、妊娠中に流産や死産、中絶された子供や、生まれてから1年以内に亡くなった赤ちゃんのことです。
この子たちの霊を祀るために建てられるのが水子地蔵。
昔は7歳までの子供を神の子として扱っており、亡くなっても大人のように葬式をしないほか、先祖代々のお墓ではなく無縁仏としていました。
葬式をしなかったのは、供養することで幼くして亡くなった命が生まれ変われずに、極楽へ旅立ってしまうのを防ぐためと言われています。
現在でも不幸にもこの世に生まれてくることができなかった小さな命を供養するために、水子地蔵をお墓に建てるなど水子供養を行っています。
水子地蔵の違いについて
そんな水子地蔵ですが、見た目にいくつかの違いがあるのをご存知ですか?
地蔵には合掌している地蔵と、錫杖を手にしている地蔵、そして子供を抱いている地蔵の3つに分けられます。
それぞれにはどんな意味や役割があるのでしょうか?
・錫杖を持っている地蔵
錫杖を持った水子地蔵は、賽の河原で石を積んでいる子供たちを救いにきた地蔵菩薩です。
親よりも早くに命を落として悲しませたとの罪の重さから、子供たちは親の幸せを願って一つひとつ石を積んでいます。
しかし、賽の河原にいる鬼は一度積んだだけでは、罪をつぐなえないと子供たちが積んだ石を金棒で壊してしまうのです。
なかなか成仏できずに苦しんでいる姿を見たお地蔵さまは、水子たちを鬼から救いました。
その後も水子たちは地蔵菩薩に守られて、安心して暮らせるように水子供養をしているお寺を中心に置かれています。
・合掌している、子供を抱いている
合掌している水子地蔵は、水子の母親代わりの慈母地蔵尊です。
この慈母地蔵尊のもとは慈母観音菩薩で、母が子へ与える愛情のように深い慈愛の心を持った菩薩様です。
ほかにも、錫杖と一緒に子供を抱いている水子地蔵もいますが、子供を抱いている地蔵は子安地蔵(こやすじぞう)とも呼ばれています。
子安地蔵は妊婦の安産を守護してくださる地蔵尊で、安産以外にも子授けなど妊娠を祈願するためにお参りを行います。
また、生まれた子供が健やかに成長するのをお守りくださる地蔵でもあり、妊婦は安定期に入った戌の日にお参りをします。
<まとめ>
水子地蔵はこの世で長く生きられなかった子供を祀り、供養するためのお地蔵様です。
水子供養を行っているお寺をはじめ、赤ちゃんを亡くした家系のお墓のそばに水子地蔵を立てられる方もいらっしゃいます。
お寺で水子地蔵を見かけることがあったら、極楽で暮らす子供たちの幸せを願って手を合わせてみてはいかがでしょうか。