アカデミー賞を受賞した映画「おくりびと」で話題になった納棺師という職業。
その名の通りご遺体を棺に納める仕事ですが、残された遺族の気持ちを第一に考え、故人の最後の旅立ちをサポートするプロです。
今回は、そんな納棺師とはどんな職業なのか、また納棺に際して私たちが参加する内容はどのようなものがあるのか、くわしくご紹介いたします。
納棺師とは?
納棺師は葬儀社から依頼を受け、火葬を行うまでご遺体の状態を管理するお仕事です。
たとえば、遺体の身支度を整え、ドライアイスで腐敗の進行を抑えることや、死に化粧を施したり、遺体の修復をするエンバーミングを行ったりすることもあります。
ご遺体を生前に近い状態に美しく整えることで、遺族や参列者が故人と無事に対面ができるようにするプロフェッショナル。
いわば故人と遺族との最後のお別れをサポートし、大切なひとときを悔いのないように、さまざまな工夫を行う橋渡しと言える重要な役割を担っています。
納棺師は湯灌(ゆかん)を行うことも
湯灌(ゆかん)はご遺体を入浴させて、体をきれいに洗う行為です。
もともと湯灌を専門にする湯灌師という職業もありますが、中には納棺師が湯灌までを行うこともあり、故人の生前中の疲れを取り、癒してあげるのが目的。
浴槽を使ってお湯をかけ流し、体を清めてから最後の旅立ちへ向けての身支度を整えるのです。
映画「おくりびと」で行っていた湯灌は古式湯灌と言い、布団に横になっている故人の体を濡らした布で拭いて清める方法。
こちらは納棺師だけでなく、遺族も参加してご遺体の体を清めることが多いです。
洗髪と洗体の後は、髭剃りや産毛剃りをして、その後白装束を着せて身支度を整えます。
このとき、遺族の希望によって白装束でなく、生前に故人が好きだった思い出の服やドレスを着せる家庭も増えてきており、遺族の希望に沿った納棺が行われるようになりました。
遺族が参加する納棺の手順
そんな納棺師による納棺の手順の中で、遺族が参加するのは大きく分けて2つがあります。
1つは湯灌後に、ご遺体に宗派や宗教に合わせた衣装を着せること。
仏式なら手甲や脚絆、足袋を履かせる経帷子を着用しますが、喪主を含め遺族の方々が一つひとつの装飾品を身に付けさせます。
また、棺にご遺体を納めたら、副葬品を棺に入れていくのも遺族が担当します。
故人が好きだった食べ物や雑誌、中には遺族の髪や爪などを入れるところもあるようです。
他にも千羽鶴や故人への手紙、硬貨などを納めて火葬することもあり、基本的に火葬に影響がないものであれば棺に入れることが可能です。
<まとめ>
このように、納棺師は単純にご遺体を棺に納めるだけでなく、故人と遺族が後悔のないお別れができるよう、ご遺体を清め生前のように美しく着飾るお仕事です。
日本ではご遺体を修復するエンバーミングがあまり定着していませんが、特に事故などでご遺体の損傷が激しい時や、一定期間保存する必要がある時に欠かせない技術。
納棺師は、最後の旅立ちをお手伝いするという、責任が重い仕事だからこそ遺族から深く感謝をされる職業なのです。