仏教においての悟りを得るために、日夜心を落ち着けて坐禅をすることを修行の基本にしているのが禅宗です。
日本には三禅宗という3つの禅宗がありますが、その中の一つが黄檗宗(おうばくしゅう)です。
今回は、黄檗宗とはどんな宗教なのか、またお墓にどんな特徴があるのかについてご説明します。
黄檗宗の開祖について
もともと禅宗は中国で起きた宗教であり、後に日本に伝えられました。
日本に渡ってきた禅宗は「臨済宗」「曹洞宗」、そして今回紹介する「黄檗宗(おうばくしゅう)」の3つで、これらを三大禅宗と言います。
黄檗宗の開祖は隠元禅師(いんげん)で、大本山は京都府宇治市にある黄檗山万福寺。
ほかの三大禅宗である臨済宗と曹洞宗は鎌倉時代の初期に日本へ伝えられましたが、この黄檗宗は江戸時代初期に伝えられた比較的新しい禅宗です。
1654年に伝えられて以来、1740年までは中国の住職を招いてきましたが、それ以降は日本の僧である龍統元棟が第14代住持となりました。
黄檗宗の教えと修行について
黄檗宗では、人は生まれつき体の中に悟りの種を持っているという「正法眼蔵」という考えがあります。
その真理にたどり着くために必要なのは、経文や仏像ではなく自分自身の心を向き合うことであるというのが黄檗宗の教えです。
黄檗宗を含む禅宗は、自分の心の中に存在している阿弥陀仏に気づくことが根本的な目的でそのために必要なのが坐禅だと説いたのです。
黄檗宗では「この世の中に存在するのは心だけで、目で見えるすべての物事や起こる現象は、心の働きがもたらしたもの」という「唯心」の教えを大切にしています。
そのため、私たちの心の中にこそ極楽浄土を見出せると信じられているのです。
隠元禅師が残した訓戒の中にも、自分自身の究明のために昼夜ともに修行に励みなさいという意味の言葉があります。
自分自身を究明するとは、どうやって生きていくのかということを決めることで、人のためよりもまずは自分のことを解決するべきと説いたのです。
黄檗宗の葬儀やお墓の特徴は?
黄檗宗は中国の文化を色濃く残していて、お経や精進料理やお寺の外観まで、中国風になっています。
そのため、法要の際に唱えるお経も「摩訶般若波羅蜜多心経」と書きますが、読み方は「ポゼポロミトシンキン」という中国語の発音。
このような違いに葬儀に参列された方は驚いてしまうかもしれませんが、唱えている内容はほかの宗派と同じく般若心経などが基本です。
また、お墓もほかの宗派と特に変わりはなく、彫刻は「〇〇家之墓」となっているものが多いです。
ちなみに五輪塔は上から「空」「風」「火」「水」「地」の梵字をそれぞれ彫刻していきます。
<まとめ>
黄檗宗は日本に伝わる禅宗の中でも、お経や使用する仏具もすべて中国で使われていたものです。
そのため、ほかの宗派ではあまり見られない、銅鑼や太鼓などの鳴り物が使われて、まるで音楽のような読経が特徴。
総本山の萬福寺に置かれている調度品はすべて中国のもので、色鮮やかな品物の数々は目で見るだけでも華やかですよ。
ほかにも中国の精進料理の「普茶料理」も食べられるなどいろいろなプランが用意されているので、観光地としても楽しめるおすすめのスポットです。