仏教の宗派はそれぞれ考え方や教えに違いがあり、学んでいくうちに私たちの心に響かされる教えを知ることができます。
そんな宗教の中でも、律宗(りっしゅう)は特に戒律を重んじていいて、とても厳しい戒律を信者が守り続ける宗教です。
今回は律宗の特徴や教え、そしてお墓についてご説明します。
律宗の開祖について
律宗(りっしゅう)は、今も残っている南都六宗の一つです。
日本に律宗をもたらしたのは鑑真(がんじん)で、帰化僧として日本の仏教に多いなる影響を与えた存在です。
律宗が入ってくる以前、奈良時代までは日本は受戒制度がなく、戒を受けていない私度僧が世の中にあふれていました。
律宗が生まれた中国では正式に僧侶になるに、戒律を修めるという決まりがありました。
日本でも唐から戒律を伝えられてはいたものの、当時その理解が十分ではありませんでした。
開祖である鑑真は、日本へ律宗を伝えるために何度も航海へ挑戦しました。
海賊に襲われたり視力を失ったりするなどの波乱万丈な航海を繰り返し、6回目にようやく日本にたどりつくことができたのです。
その後東大寺へ戒壇を開いて、聖武天皇などの人々へ律宗の戒律を授けたのです。
律宗の教えと修行について
律宗はとにかく戒律をもっとも重んじている宗派です。
戒律の一つひとつには、人にとって重要な教えが込められていて、研究を進めて理解を深めていくことで悟りを開けると考えられています。
鑑真が受戒制度を持ち込んだことで、僧侶になりたい人は戒律に従い具足戒を受けるという決まりができました。
この具足戒は男性の僧(比丘)で250個、女性(比丘尼)ではなんと348個もの厳しい戒があります。
たとえば、殺生、盗み、禁酒を始め、食事の回数や間食の禁止など、人が生活するすべての事柄を事細かに律する内容です。
他の宗派は経典や論に重きをおいていますが、律宗は戒律をすべて守ることを重んじ、それによって悪事が防げると説いています。
これを「摂律義戒」と言い、諸悪の根源は全て捨て去ることが悪事の予防になるとの教えです。
ほかにも「摂善法戒」は善方を積極的に行いましょうという教えや、「摂衆生戒」は全て人々へ利益を施しましょうという教えがあり、欲を捨てて戒律を守ることが大切だと説いたのです。
このように、混とんとしていた日本の仏教界において鑑真が律宗を伝えたことで、だれでも僧侶を名乗ることができた仏教界を大きく変化させました。
律宗のお墓は必要なのか?
そもそも現在の檀家制度が誕生したのは江戸時代からです。
それよりも以前に誕生した律宗を含めた宗教のほとんどは、最大の穢れである人の死を避けるために僧侶が葬儀を行ったり、読経をしたりすることはありませんでした。
現在律宗の信者が亡くなった場合は、ほかの宗教の僧侶に依頼して葬儀を行う形となります。
またお墓についても、葬儀を行った宗派のお墓や、宗教・宗派が不問の墓地や霊園へ埋葬を行います。
<まとめ>
律宗は経よりも、「具足戒」をはじめとする戒律を修学し重んじている宗派です。
現在でも数は少ないものの律宗の信者は存在しています。
しかし、律宗自体に法要やお墓を用意するという考えがないことから、律宗の方を弔う際は別の宗教の僧侶にお願いをする形になるため注意しましょう。