樒(しきみ)という植物をご存知でしょうか?
宗教問わず、お墓や仏壇にお供えしますが、古くから葬儀の際にも会場や自宅に飾られてきました。
今回はこの樒とは何なのか、どんな風に使われているのかについてご説明いたします。
樒(しきみ)ってどんな植物?
樒は「しきみ」、「しきび」と呼ばれており、もくれん科の常緑樹のこと。
枝や樹皮からはお線香のような独特の香りを感じられるのが特徴で、実際お線香や抹香として使われてきました。
果実の部分は有毒成分があり、古くに「悪しき実」と呼ばれていたことが転じて「しきみ」と名付けられたのです。
ちなみに樒の果皮の有毒成分はとても強く、子供や犬などの体が小さい生き物だとほんの12㎎程度で致死量になります。
そのため、墓地や斎場で見かけたら子供やペットが触らないよう十分に注意してください。
樒がお墓や法要に使われるのはどうして?
この樒が葬儀の際やお墓に使われるようになったのは、日本で土葬が一般的だった時代までさかのぼります。
当時は墓地周辺に野犬や狼が出没することが多く、土葬された死体を掘り起こされる事件が少なくありませんでした。
そこで、匂いが強く有毒である樒の木を墓地に植えることで、お墓が荒らされないようにしていたのです。
また、樒の独特なお線香のような香りは死体の臭い消しの効果があるとされており、先述したように今もお線香の香料として使われています。
お葬式の際は、斎場や自宅の玄関に背の高い樒の飾り物が置かれており、お清めや悪霊除けの役割を果たしています。
他にも地域によっては、埋葬や納骨の際に一本花として樒を一つお供えする風習があるところも。
関西では樒を飾るのが一般的ですが、関東地区では樒を使わず花輪を飾る地域も多いです。
近年では紙で代用した板樒や紙樒が使われる
大きな樒をそのまま斎場や自宅に飾るではなく、板樒や紙樒を使うことが主流になりつつあります。
紙樒は門樒を省略したもので、受付で一定の金額を支払った参列者の名前や所属を、紙に記したもの。
名前を書いた紙樒は、門樒のように葬儀会場の入り口に掲示します。
そして板樒も同じく木板や紙に氏名や所属を書いて、葬儀会場の表へ張り出す風習です。
花輪や樒では場所をとってしまうため、板樒や紙樒を用いることで飾るスペースが少なく済むという利便性も兼ね備えているのです。
<まとめ>
樒は今も墓地によっては植えられており、自宅や葬儀場に飾るところもあります。
しかし、近年では家族葬などの小さい葬儀が増えていく中で、葬儀の際に樒を飾る機会自体が減ってきました。
そのため、樒がある葬儀風景は現在貴重なものになりつつあると言えるでしょう。