寺院墓地や公営墓地の中に、今とは違う古いお墓がいくつも並んでいる場所を見かけたことがありませんか?
そのようなお墓は「有縁無縁供養塔」と言い、私たちの現在の暮らしの基礎を築いた先住者たちのお墓なのです。
今回は有縁無縁供養塔とは何か、いったい何のために建てられているのかについてご紹介します。
有縁無縁供養塔とは?
有縁無縁供養塔とは、現在お墓の管理者(施主)が不明のお墓を集めて供養をしている場所に建てられた供養塔です。
古いお墓の中には、何らかの理由で継承者がおらず無縁墓となってしまったものもあります。
どこの誰が埋葬されているのかわからないお墓も含めて、それらを一か所にまとめて供養するために建てられたのが「有縁無縁供養塔」なのです。
有縁無縁供養塔はなんのためにあるのか?
そもそも有縁(うえん)とは、地縁や血縁などの深いかかわりがある関係のことを指します。
無縁はそれらとのつながりがない=縁がないものを意味しています。
仏教では「有縁無縁」という全ての命が直接かかわりがなくても、実はしっかりとつながっているとの教えがあります。
家系のご先祖様という有縁の方はもちろん、見知っていない他人の方の霊も含めてご供養をする慈悲の心を広く持つことが大切と考えているのです。
ご先祖様のみならず、すべての魂をご供養するという気持ちを持つことがすべての人々への救済になるのです。
お墓は自分たちのご先祖様のものを守ることももちろんですが、訳あって現在継承者がいなくなったお墓もまた、私たちにとってのご先祖様に変わりはないのです。
このようなお墓を供養することは、これまで私たちが快適に暮らせるように土地を開拓してくださった、先住者の方への感謝の気持ちを表す大切な行いなのです。
有縁無縁供養塔へのお参りは功徳につながる
たとえ無縁であった方でも、先住民としてその土地の山を拓き、川や田んぼ、畑や道などを作り、これまで維持してきた存在です。
先住民が努力を重ね、ここまで発展させたからこそ私たちは日々快適な住居で暮らし、道を使って移動が可能なのです。
ところが、何らかの理由で無縁墓となり誰からもお参りされないお墓もあります。
このようなお墓をお祀りして供養をすることは、仏教において功徳を積むことにもつながります。
自分が入るお墓も、現在は子供や孫が継承していきますが、それが何代にもわたって永遠に続くとは限りません。
だからこそ、自分たちのお墓だけでなく無縁となってしまったお墓を供養する「有縁無縁供養塔」は欠かせない存在なのです。
<まとめ>
有縁無縁供養塔はわけあって無縁墓となってしまった魂を供養するための塔です。
毎年寺院によっては、有縁無縁供養塔のために定期的に清掃をする機会を設けたり、お花やお線香を手向けたりと、お墓参りをする行事が用意されていることもあります。
直接かかわりがなかったとはいえ、ご先祖様は私たちの生活の基礎を作ってくださった存在です。
有縁無縁供養塔を見かけることがあれば、ぜひ手を合わせて日頃の感謝の想いを伝えてみてはいかがでしょうか。