仏教と一口に言っても、その宗派はたくさん存在しており、それぞれ教えに違いがあります。
融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)は、大治2年(1127年)に生まれた宗教で大阪に総本山があります。
関西では知っている方も多い宗教ですが、関東や東北ではあまり耳慣れない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、そんな融通念仏宗とはどんな宗教なのか、またそのお墓の特徴をご説明します。
融通念仏宗の開祖について
融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)は、良忍(りょうにん)が開祖の宗教です。
良忍は12歳から比叡山の延暦寺などで修業を重ねてきましたが、当時の比叡山は貴族とのつながりが密接で俗化の傾向にありました。
そのため、良忍は俗に染まらずに修行の道を極めるために23歳で大原の里にある勝光院に隠棲をしたのです。
なんとそれから24年間にわたって隠棲を続け「法華経」を読経し、「六万偏の念仏」を学ぶというとても厳しい修行を行いました。
そんな厳しい修行を経て、40歳になったときに阿弥陀仏から「一人一切人、 一切人一人 、一行一切行、 一切行一行、 十界一念、 融通念仏、 億百万編、 功徳円満」という教えを授かったのです。
これは、自分が唱える念仏はすべての人の功徳にもなるとの教えです。
つまり、人が唱えた念仏も自分の功徳になり極楽へと往生できるという他力往生を説いたのです。
融通念仏宗の教えと修行について
融通念仏宗は、経典のうち奈良仏教の華厳経、法華経を第一に、そして浄土三部経が第二に経典としている仏教です。
別名「大念仏宗」と言われていて、人々が唱和している念仏に自分の念仏と阿弥陀仏の力など、すべての念仏の力がお互いに共鳴し、融通して大きな力になると説いています。
つまり、念仏を唱えることで人同士や人と物、そして物同士の関係が混ざり合うことで、苦しみや迷いのある世の中に喜びがあふれ、やがて悟りの世界(浄土)にできるという教え。
この融通の考えでは、一人ひとりの念仏の力は小さくても、同時にたくさんの人々に功徳を分かち合うことでもあると考えられているのです。
念仏を唱えることこそが極楽へとつながるとして、融通念仏宗の信者は毎朝十篇の念仏を読経することを始め、さらに日課として百篇もの念仏を唱えることが基本的な勤めとされています。
融通念仏宗のお墓の特徴
融通念仏宗のお墓は、基本的に「南無阿弥陀仏」「〇〇家之墓」などと彫刻するのが一般的です。
和型墓石を選択される方が多いですが、中には洋型墓石やデザイン墓石を選ばれる方もいらっしゃいます。
彫刻する文字もさまざまで、好きなメッセージや言葉を刻むこともできるため、建墓の際は石材店へ相談してみましょう。
<まとめ>
融通念仏宗は、自分が唱える念仏が自分だけでなくすべての人への功徳になり、また他人が唱えた念仏も自分の功徳になるという、念仏を唱えることで極楽へと往生できると説いた宗教です。
大阪に総本山があり、ほかにも融通念仏宗のお寺がいくつか存在しています。
また、融通念仏宗の総本山である大念佛寺では、毎年5月1日~5日に「万部おねり」という伝統行事があります。
二十五の菩薩や踊躍念仏の一団が、豪華な衣装で橋を渡る光景は荘厳でとても華やかですよ。
その姿を一目見ようと、ゴールデンウィークになると多くの観光客が足を運ぶ人気のスポットでもあるのです。