近年、少子高齢化やライフスタイルの多様化に伴い、お墓の継承や供養はさまざまな形で行われるようになりました。
例えば、昔であれば長男がお墓を継ぐのが一般的でしたが、最近では「お墓を継がない」という選択肢を取る方も増えています。
一方、「長男が継がないお墓はどうなるの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。この記事では、長男がお墓を継がないケースや対処法を紹介します。
<長男が墓を継がない選択は可能>
長男がお墓を継がない選択は可能であり、長男以外の子どもや親族がお墓を継いでも何の問題もありません。
ここでは、長男がお墓を継がない理由や継ぐべきとされてきた理由について解説します。
-長男が墓を継がない理由
一昔前までは長男がお墓を継ぎ、さらに子や孫に継承していくスタイルが一般的でしたが、最近は継がずに無縁化するお墓が多くあります。
長男がお墓を継がないのは、少子高齢化でお墓を継ぐ子や孫がいなかったり、遠方に住んでいてお墓の管理が難しかったりするためです。
継承者がいなくなったお墓は劣化が進み、荒れ放題の状態となり、墓石が倒壊して周囲の墓石を傷つけてしまうリスクがあります。
このように、継承者がいないお墓がトラブルのもとになるリスクもあるため、継がないのであれば墓じまいや改葬などを行われなければなりません。
-長男が墓を継ぐべきとされてきた理由
長男が墓を継ぐべきとされてきた理由は、明治時代に普及した家督相続制度や風習などが大きく関係しています。
家督相続制度は、一家の戸主という権利や義務と、一家の財産を引き継ぐ制度であり、原則的に家を継げるのは長男一人です。
お墓は祭祀財産の一部となるため、一家の権利を引き継ぐのと同時にお墓を継ぐのが一般的でした。
このようなルールが設けられていたのは、家督を継ぎたいもの同士での争いが頻発していたためで、お家騒動を防ぐことが目的でした。
家督相続制度によって女性よりも男性を優先し、同性同士なら年長者を優先するような暗黙のルールが生じ、現代も風習や慣習として残っているところもあります。
-長男が墓を継がなくても問題ない理由
長男がお墓を継がなくても問題ない理由は、家督相続制度が1947年に廃止され、現在においては長男がお墓を継承しなければならないという法律がないためです。
必ずしも長男がお墓を継ぐ必要がないため、長男が継承できないのであれば、次男や三男、長女や次女が継ぐこともできます。
ただし、お墓を継ぐ人は遺言や生前に口頭や文書で指定した人、地域の慣習によって決まるとされています。
また、これらで決まらない場合は家庭裁判所での調停や審理で決定されることから、他に候補がいなければ慣習によって長男に継承義務が生じる可能性もあるでしょう。
墓地によっては男性でなければ継承できないと規定されているケースもあるため、墓地側のルールを確認しておく必要もあります。
-仏壇の継承について
長男がお墓を継がなくても問題ないように、仏壇についても長男が継承しなければならないルールはありません。
そもそも仏壇はお墓と同じ祭祀財産となるため、お墓を継ぐ人が仏壇も継承するのが一般的です。
仏壇は仏様がいる場所で家庭の中のお寺としての役割があり、日常における故人さまやご先祖様に感謝する場となっています。
お墓を継ぎたくない理由として、お墓の管理だけでなく、仏壇を自宅に置くスペースがなかったり、生活様式に合わなかったりする場合もあるでしょう。
このような場合、代々引き継がれてきた仏壇を撤去・処分する仏壇じまいや省スペースの仏壇に変える方法もあります。
<長男以外が墓を継ぐケースについて>
長男がお墓を継がない場合は、他の人が代わりに継ぐというケースもあります。ここでは、長男以外がお墓を継ぐケースを紹介します。
-長男以外で墓を継ぐ人
遺言や生前に長男以外でお墓を継ぐ人が指定されている人がいる場合は、その人がお墓の継承者です。該当する人がいない場合は、慣習や親族の話し合いで決めなければなりません。
長男が継がない場合だと次男や長女が候補に挙がることが多いですが、子どものいない家庭においてはそれ以外の親族が継承する場合もあります。
また、近くに住んでいて親交がある場合に、故人さまの兄弟や姉妹、甥、姪などに相談し、お墓を継いでもらうことも可能です。
お墓は血縁関係がなくても継承できるため、親族と関わりが深い人にお墓を継いでもらうこともできます。
-長男以外が墓を継ぐときに必要なこと
長男がお墓を継がず、それ以外の人が継承することになった場合、墓地使用者の名義変更を行わなければなりません。
基本的に事前の取り決めがない限り、お墓を継ぐのは長男に設定されている場合が多く、名義変更しておかないと自動的に継ぐことになるため注意しましょう。
また、お墓の名義変更は行政でなく、墓地管理者に対して行う必要があるため、お墓を管理している管理者に問い合わせが必要です。
-長男以外が墓を継ぐときの注意点
長男以外がお墓を継ぐときの注意点は、墓地によっては長男や本家のみが埋葬できるようなルールを設けている場合があることです。
また、お墓の継承ができるのは三親等や使用者の親族など、細かい規定があるケースもあるため注意しましょう。
このような規定があると、長男以外がお墓を継いだ場合、死後に埋葬してもらえない可能性もあります。
無理に埋葬すると永代使用権が取り消され、トラブルに発展する場合もあるため、事前に墓地の管理者に確認しておきましょう。
<長男以外に墓を継ぐ人がいない場合は墓じまいも選択肢>
長男以外にお墓を継ぐ人がいない場合は、無理に継承者を探すのではなく、墓じまいも選択肢の一つとしてあります。
ここでは、長男以外にお墓を継ぐ人がいない場合の墓じまいについて解説します。
-墓じまいとは
墓じまいとは、墓石を撤去・処分し、墓地を更地に戻してお墓の使用権を返却して手放すことです。
また、墓じまいをしたあとにお墓の中にある遺骨を取り出し、別の墓地や永代供養墓地に移すことを改葬といいます。
基本的には墓じまいと改葬はセットで考えられており、墓じまいを行うなら別の形で供養する方法も検討しなければなりません。
長男がお墓を継がず他にも継承者がいない場合、墓じまいをしなかったら、そのお墓は無縁仏となってしまいます。
無縁仏になってお墓の管理をする人がいなくなると、行政や墓地の管理者に撤去され、先祖に対して罰当たりになってしまうのです。
近年はお墓の継承者がいなかったり、お墓参りが困難になったりなどの理由で、墓じまいを行うケースは少なくありません。
-墓じまいの流れ
墓じまいは以下の流れで進めていきます。
1. 親族に相談する
2. 墓地の管理者に相談する
3. 改葬先を決める
4. 改葬のための行政手続きを行う
5. 閉眼供養を行う
6. お墓の解体工事を行う
7. 新しい場所で供養を行う
改葬の手続きを行うためには自治体で改葬許可申請書を手に入れ、墓地の管理者に埋葬証明書を発行してもらう必要があります。
また、次の改葬先からは受入れ証明書を発行してもらい、すべての書類が揃ったら市役所に提出しなければなりません。
墓じまいを行うためには、さまざまな手続きが必要となり、時間や費用もかかる点に注意しましょう。
しかし、近年では墓石の販売や供養全般のサービスを提供している石材店も増えており、少ない負担で墓じまいを行うこともできます。
-墓じまいの注意点
墓じまいを行う際の注意点として挙げられるのは、墓地の管理者と離檀を巡ってトラブルが発生するケースです。
寺院にお墓を持っている人が墓じまいをして改葬を行う場合、寺院の檀家をやめること(離檀)になります。
その際、寺院から高額な請求をされてトラブルに発展する場合があります。
一般的に離檀する際にはこれまでの感謝の気持ちも込め、5~20万円前後の離檀料をお布施として渡す風習があります。
しかし、離檀料はお布施であることから、寺院から高額請求されても法的に支払い義務はありません。
一方、お墓を建てる際に交わした契約書に離檀料が記載されている場合は、規約通りに支払いが必要になるケースもあります。
離檀料でトラブルが発生すると、「埋葬証明書を発行しない」のように、墓じまいや改葬を阻止されるようなケースもあるため注意が必要です。
<墓じまいをしたあとの供養について>
墓じまいをしたあとの供養方法としては、永代供養や散骨、手元供養などがあります。ここでは、それぞれの供養方法について解説します。
-永代供養
永代供養とは、霊園や墓地の管理者が遺骨を預かり、墓を建てなくても供養や管理を行ってくれる供養方法のことです。
永代供養と一言でいっても、遺骨を安置する方法や埋葬のスタイルによりさまざまなタイプがあります。
ここでは、永代供養の中でも特に選ばれることの多い合祀墓、納骨堂、樹木葬をそれぞれ解説します。
●合祀墓
合祀とは複数人の魂を一緒にお祀りする儀式のことで、合祀墓は複数人の遺骨が同じエリアに埋葬されているお墓です。
個別に埋葬される一般墓ではなく、個別に墓地や墓石を建てる必要がないため、他の方法に比べて費用を安く抑えられるメリットがあります。
一方で、埋葬してしまうと後から遺骨を取り出して他のお墓に移すことができないため、後のことまで考えて検討しなければなりません。
●納骨堂
納骨堂は、収蔵スペースを備えた建物の室内で遺骨を納骨できるお墓の一種です。
納骨堂は遺骨を墓石に納めるまでの間、寺院が骨壺を預かるための施設として利用されてきました。
そのため、厳密にいうとお墓ではないものの、近年では納骨堂をお墓として利用したいニーズが増え、お墓として利用できる納骨が増えています。
天候の影響を受けにくく、さらには冷暖房も完備されているため、気温や天気に左右されずにお墓参りできる点がメリットです。
しかし、納骨堂の多くは保管に一定期間を設けており、期間が過ぎると他の遺骨と一緒に供養する合祀墓に移されます。
●樹木葬
樹木葬は、墓地や埋葬に関する法律の許可を得ている霊園や墓地で遺骨を埋葬し、遺骨の周辺にある樹木を墓標とするお墓の一種です。
花や樹木などが多くあるため、通常の墓地に比べると明るい雰囲気で、自然に還っていくことをイメージしています。
そのため、宗旨や宗派を問われないことが多く、さらに管理も不要であるため、継承者がいなくても問題ありません。
ただし、樹木葬を行っている霊園や墓地によっては、自然の豊かさを重視するため交通アクセスが不便な場所のケースもあります。
-散骨
散骨とは、粉末状に砕いた遺骨の粉を海・山・空などに撒き、故人を自然に返す供養のスタイルです。
日本には散骨に関する規制や法律は存在せず、節度を持ったお別れであれば罪に問われることもありません。
ただし、遺骨をそのまま撒くことは禁止されているため、粉骨してからではないと散骨できないため注意しましょう。
散骨のメリットは、お墓を必要としないため墓地や墓石の購入費や管理費が発生せず、コストを抑えられる点です。
また、お墓のように管理や維持も必要なく、子ども世代に負担をかけることもありません。
一方、海や山などに散骨すると二度と戻らないため、お墓参りができずに寂しい思いをする可能性もあるでしょう。
親族に散骨を反対されるケースもあるため、事前に許可を得ておく必要もあります。
-手元供養
手元供養は、故人さまの遺骨を自宅で保管したり、アクセサリーやペンダントなどに加工したりする供養のスタイルです。
手元供養は新しい供養の形であり、中には「違法じゃないの?」「宗教的に問題ないの?」など疑問や不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、手元供養は法律的にも宗教的にも問題はまったくなく、故人さまを身近に感じられ、お墓を用意する場合に比べて費用負担が少ないメリットがあります。
一方で、周囲からの理解を得られずに反対される場合もあるため、手元供養を行う際には家族や親族に許可を得なければなりません。
また、持ち歩けるタイプの手元供養品だと、外出中に紛失してしまうリスクもあり、管理には十分に気をつける必要があります。
手元供養の方法としては、ミニ骨壺に入れて自宅で保管したり、アクセサリーにして身につけたりなどが人気です。
<まとめ>
この記事では、長男が墓を継がない選択や処理、供養の選択肢を紹介しました。
長男が墓を継がなければならないというルールはないため、親族はもちろん、血縁関係がない信頼できる人でも問題ありません。
ただし、墓地によっては継承のルールを定めているところもあるため、実際に長男以外が継ぐ場合は確認しておく必要があります。
また、墓を誰も継ぐ人がいない場合は墓じまいをし、永代供養や散骨、手元供養を行うなどの選択肢もあります。これらの方法はお墓の管理が不要となるため、手間がかかりません。
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